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■ web連載小説 江ノ島ベイビィ● 第3回

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3 『ボクとキミ、それからタマとみささん』

 ボクがボクのことをボクとか言っちゃってるのに、理由はない。
 雪野がボクのことをキミなどと言うのと同じように、ボクは自分のことを自然な感性でボクと言う。
 脱オタクとかそんな関係のホームページで、自分のことをボクなどと言う女はオタクっぽいと書かれていて凹んだりしたこともあったけど、一人称「ボク」はボクの骨の随の随にまでに染み付いていて、ボクはもうボク以外の何者にもなれないのだ。
 記憶をさかのぼって、ボクが自分のことをボクと言い始めたキッカケがなんだったのかを探ってみても、それを思い出すことはできない。気づいたときにはもうボクは自分のことをボクと言っていて、つまり、ボクは生まれついてのボク女、ナチュラル・ボーン・「ボクっ子」なのである。
 両親は、このことについてはボクを叱らなかった。というよりも、きっと、ひきこもりとか不登校とか、二十一世紀初頭の日本としてはタイムリーで派手な問題の方に目を奪われてしまったため、そんな瑣末な部分にまでは気が回らなかったのだろう。一緒に住んで毎日顔を合わせていたのだし、慣れてしまってそれが自然なことだと思ってしまっていたのかもしれない。
 同じように、ほぼ毎日顔を合わせはしていても、結局のところはお互い他所様の家の子でしかない学校ではどうだったかと言うと、中学卒業まではとりたてて何も言われた覚えはない。ボクのいない陰ではどうだったかは知る由もないけれど、そこそこ人気者のボクではあったので、剣呑な言われ方はしていなかったろうと思う。嫌な言われ方をしたのは、高校に入ってからだ。ボクがボクのことをボクと言っていること自体が直接の原因ではなくとも、白い目に囲まれるなんて事態がいい記憶ではないのは確かだろう。
 まぁ、そのことについては、追々。



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