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■ web連載小説 江ノ島ベイビィ● 第8回

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8 『江古田、二ヶ月と二十日ぐらい前 その2』

 学校に着いてみた。
 何しろ始業式なので、昇降口近くの掲示板にはクラスの振り分け表が張り出されていた。これがまたチンケな、B5ぐらいのコピー用紙に味気なく名前の羅列がプリントされているという味気なさで、わざわざ校庭に大きな簡易掲示板を作って高い場所にドーンとでっかい文字で張り出していた合格発表からは随分とスケールダウンしたものだなぁ、と、失望の溜息を零してしまった。「一緒のクラスだねー」などという声が、そこここで聞こえたけれど、やっぱり合格発表の時ほどには盛り上がってはいない。
 で。
 残念な事に、高田とは別のクラスになってしまった。
 ……−5。
 けれど、美樹が一緒だった。
 +10。
 なにしろ同じ中学の出身は一年に七人しかいないのだ。そのうちの一人であり、特に仲の良い美樹がいつでも側にいてくれるのは大変、心強い。
「まぁ……クラスが違ったって、なんとかなるよね?」
 そう言うと、美樹はひょいと肩をすくめて
「なんともなんなくても、どーせ、なんとかするんだろ?」
 意地悪く笑った。
 ボクは、フフン、と不敵に鼻を鳴らしてみる。
「まぁ、するんだけど」
 美樹の席の隣にボクは立っている。美樹は座っている。ここはボクたちの教室で、始業前であり、結構、騒がしい。
 あちらこちらでダマになっているのは、多分、同じ中学出身同士の人たちで、他のクラスの人も混じっているんだろうと思う。
 男子より女子の方がウルサいのは、そういう校風だと思っておいた方がこの先の学校生活が幸せに過ごせるだろうか。
 などと頭の中で計算していると、椅子の脚がリノリウムの床に擦れる音がした。
「なー、葉月ー」
 美樹が言う。
「んぁ?」
 ボクは美樹に目を向ける。
「高田の教室行ってみねぇ?」
「行く気満々じゃん。て言うか、すでに立ち上がってるし」
「まーね」
 元々、高田を好きだったのは美樹の方だった。モスバーガーでオニオンリングを齧りながらブチブチと愛を告白された時は、ボクにではなくタカダとやらに(当時、ボクは高田を知らなかった)言えよと笑ったのだけれど、自分が好きになってみて美樹の気持ちが良く分かった。
 ぶっちゃけた話、美樹の顔がいいかと言うと、悪くはないんじゃないの? と慰めまじりに肩を叩いてしまうような感じだし、ボクもまぁ、普通よりちょい上ぐらいだったらいいなぁと自分で願っているような程度のものだ。そんな女が高田みたいな背の高いキレイ系の男子を好きと決めるとなると、やっぱりそれなりの勇気が要る。あーぜってー不釣り合いだよなぁ、と、片思いとか恋が実るとか実らないとか、それ以前の、自らの生まれの不幸とかそんなレベルで溜息を吐き出すようになってしまう。要は劣等意識だ。
 それで美樹は結局、そいつに負けてしまった。プレッシャーに押しつぶされて、自分に釣り合いそうな並程度の男子と付き合い始めてしまった。それでいいのかと、ちょっと癇に障って、「そんじゃあボクが高田を好きになっちゃおうかなぁ」などと言ってるうちに本当に好きになり、今に至っている。



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