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■ web連載小説 江ノ島ベイビィ● 第2回

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2 『山崎葉月の『爽やか☆ヒッキーライフ』』

  さて、こうしてボクは生涯の敵、雪野と出会うことなるわけだけれど、話を進める前にボクの素敵なヒッキーライフをご紹介しよう。
 夏になると蒸し返す怪談番組とか、毎週どこかしらの局のどこかしらのコーナーでやっている温泉とか美味しい食べ物の番組と同じで、ひきこもりやニートは無難にウケるネタのようだし、正常な人から見ればかなり異常なボクの様子を先にずいぶんと書いたので、皆様きっと、ボクが送って来た悲惨でだらしない生活についての描写を、お待ちかねだと思う。心霊写真のようにワザとらしいあり得なさを気味悪がって、お肌に利く秘湯のように日頃なにかしらに対して感じている劣等意識が和らいで、舌鼓を打つ豪華料理のように落伍者の面白おかしいマヌケぶりにみんなで笑顔になる。そんな素敵な、社会の役に何も立っていない非生産階級の一個人のゴミクズみたいな人生の一ページ。ザッツ・エンターテインメント! ……本人のボクはちょっとムカつくけれど。とは言え、台風情報のアナウンサーを見て笑い転げていたボクに、ボクの姿を見て笑い転げる人間を非難はできないと言えば、まったくもってその通りだと納得するしかない。……それでもやっぱりムカつくけれど。
 ボクがひきこもりを始めたのは今年の五月の初めからで、現役の高校生がひきこもっているという状況は、当然、学校に行っていないことをも指し示すから、不登校を始めたのも五月の初めからだということになる。五月の初めと言えばゴールデンウィークの真っ最中だ。周囲からは、連休中に五月病にでもかかって学校に行くのがめんどうになり、そのまま引きこもってしまったように見えているだろう。実際、一ヶ月以上……家出したのが六月二十日で、実際には二ヶ月の方が近いのだけど……も、ずる休みを続けていると、本当になにもかもがめんどくさくなって、一日中ベッドに寝転がっているだけの日もたまにはあったし、そう思っても間違いではないけれど、学校を休み始めたのは別に怠惰とかアンニュイとかそんな曖昧なことが理由ではなかった。
 学校自体が休みであるゴールデンウィークを不登校の期間に足していいのかどうかは、バナナはおやつに含まれるかどうかと同じぐらいにどうでもいいような疑問だけれど、連休中のボクの生活はすでに、その後、家出するまでのひきこもり期間のそれに近かったと思う。衝動的にとは言え最後は家出する元気があったのだし、近場のコンビニには買い出しや立ち読みに行っていたし、一ヶ月を二ヶ月にしても本当のひきこもりの人に比べると少し期間が足りなさそうな気もするので、ひきこもりとしては例外的な存在かもしれないけれど、次に、そんなボクの五月のある一日を部分部分切り取って並べてみたいと思う。



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